1、塗装の仕事は建物を守ること
塗装は建物の美観を保つためだけのものではありません。外壁の塗装は、太陽光や雨風にさらされ、年月の経過とともに劣化していきます。塗装の剥げやひび割れを放置しておくと、そこから雨水が染み込んで、柱や土台を腐食させ、建物自体の劣化を早めることになってしまいます。職人さんは、塗装のことを「塗膜」と呼びます。それは、塗装の本当の仕事は、その塗膜で建物を保護するからなのです。
2、サイディングの塗装はモルタルより重要
住宅の外壁材は、大きく「サイディング」と「モルタル」の2種類に分けられます。モルタルはそれ自体が著しく劣化することは少ないのですが、最近、普及しているサイディングは、セメント原料をプレスし加工したものなので、塗装による保護がないと水分が浸透し、劣化の進行が早くなります。初めの製品段階で既に塗装済みなので気づきにくいのですが、定期的な塗り替えは必要です。
3、スレート屋根は塗装で劣化防止
屋根は、直射日光を浴び、風雨にもさらされる厳しい環境にあるため、外壁より塗り替えの重要性が高くなります。和瓦は塗装の必要はありませんが、「コロニアル」や「カラーベスト」と商品名でも呼ばれるスレート瓦は、セメントを板状にしたものなので、塗装が皮膜となって劣化を防ぐ役割が大きいです。普段目にしない場所なので、定期的に診断して劣化状況を確認しておくようにしましょう。
4、塗装工事の概算費用を知っておく
リフォーム工事は業者によって見積もり価格がまちまちで、不安になりますが、概算の費用をあらかじめ知っておくと業者選定の参考にもなります。一般的な延床40坪程度の2階建て住宅なら、標準的なウレタン塗料で外壁と屋根の塗装代は合わせて約100~150万円になります。平屋建になると、足場代が抑えられるので、もっと安く抑えることができますが、塗装工事は、ほぼ面積に比例しますので、この金額を大体の目安に覚えておけばいいでしょう。
5、塗装の種類は今後の生活設計で選ぶ
塗料を選ぶときは色や表面の仕上げなどの意匠が気になりがちですが、最も重要なのは耐久性とコストのバランスです。耐久性とコストを左右するのが、塗料に含まれている合成樹脂の種類です。樹脂の種類は大きく分けて油性、アクリル、ウレタン、シリコン、フッ素と5種類あり、特に近年出廻っているセラミックシリコン系はウレタンより劣る物も多いので注意。意匠性は樹脂の種類にはほとんど関係ありませんので、予算と今後の生活設計を合わせて、最も合理的な種類を選ぶように検討することが大事です。
6、進化を続ける驚きの塗料
最近の塗装の中には耐久性だけでなく、塗装自体が汚れにくい機能が目覚しく進化しています。雨水と一緒に汚れを流れ落とす「自己洗浄機能(最近の塗料のほとんどに付いています。)」や、太陽の光で汚れを分解する「光触媒塗料(コケやカビなどの有機物には効果がないので注意です。)」がそれです。また、カビや藻の発生を防止する「防カビ・抗菌機能」もあります。その他、水は通さず湿気と空気を通す「透湿型塗料」や、太陽熱による温度上昇を防ぐ「遮熱塗料」など、付加価値を持った塗料が次々と登場しています。
7、施主も塗装の工程を知っておく
リフォーム工事は、工事の工程はほとんど業者任せになることが多いようです。せっかく費用をかけるのですから、工程も知り、厳しい目で仕事をチェックすることが大事です。塗装工事にはたくさんの手順があります。手順を飛ばしたり、簡単に済ませても、仕上がりはちょっと見ただけでは分かりにくいのですが、品質や寿命、仕上がり具合が大きく変わってきますので、この機会に手順を覚えておきましょう。
8、塗装の出来栄えは下地調整で決まる
下塗り前に外壁のひび割れや損傷部を補修する「下地調整」という作業があります。仕上がりを美しくするだけでなく、雨水の侵入を防止するためには重要な作業です。大きなひび割れや傷のある箇所にはシーリング材や専用のパテ、樹脂モルタルなどを塗り込んで平滑になるよう補修します。下地調整には古い塗料をはがしたり、わざとヤスリなどで表面を荒らして塗装の乗りをよくするための「ケレン」と呼ばれる作業もあります。
9、本塗り前の下塗りに要注意
お肌の化粧乗りをよくするために、下地のクリームやローションが欠かせないように、塗装の仕上がりも下塗りが大事です。下塗りは塗装の密着を良くして、塗装ムラを防ぐために、シーラーと呼ばれる塗料を塗る作業です。中には余分な水で薄めたものを塗ったり、ひどい場合は下塗り工程そのものを省略するなど、手抜きをする業者もいるので要注意です。写真で記録を残してもらうなど、工程の確認ができる業者が安心です。
10、信頼できる業者を見きわめる
塗装リフォームは、家の中に入らなくても、外観だけで塗装の劣化状況がわかるため、比較的営業のしやすいリフォームの一つだと言われています。そのため、業者間の競争も激しく、巧妙なセールストークで近寄ってくる業者が少なくありません。「この近くで施工しているのでお宅も」や「この地域でモニターになってくださるお客様を探しています」というのは訪問販売業者の常套句です。即決は避け、実績をよく確認してください。