光触媒塗料のブームで起きたこと
外壁塗装の世界では、定期的に「画期的な最新技術」を謳う塗料が登場し、業界全体でブームが巻き起こります。
かつて一世を風靡した「光触媒塗料」を覚えているでしょうか。 「太陽の光で汚れを分解し、雨で洗い流す」「10年経っても汚れがほとんどつかない夢の塗料」──そんな営業トークが飛び交い、多くの住宅で施工されました。
しかし、現場で実際に起きたのは深刻なトラブルでした。 強力な分解作用が中塗りや下塗りの樹脂結合まで破壊する「自己破壊現象」を起こし、数年で塗膜に無数の微細なひび割れや早期剥離が多発しました。さらに、当時、光触媒を率先して勧めてた会社は、一斉にチラシやホームページから削除し、だんまりを決め込むという事態。そんな会社が今でも普通に営業をしている、そんな業界です。中には、当時の塗料メーカーが保証を出して再施工という対策をしたところもありましたが、一度塗膜の不良が外壁面全体に広がってしまうと、完全になかったことにすることはできません。対策としては、外壁の張り替えやカバー工法などの簡単には手が出せない高額な工事となってしまいます。
塗装の失敗は、簡単に元には戻せない
ここで皆様に知っていただきたいのは、「塗装の失敗は、簡単に元には戻せない」という恐ろしい現実です。
キッチンやお風呂の交換、室内の壁紙であれば「剥がして新品に張り替える」ことができます。しかし外壁塗膜は違います。 一度密着不良を起こして傷んだ塗膜をすべて削り落とす作業は、塗る作業の何倍もの手間とコストがかかります。ましてや凹凸のある意匠サイディングなどに塗り重ねられた塗膜を、傷をつけずに100%完全に除去することは、現実的には不可能です。一度の塗料選びの失敗が、大切なお住まいに取り返しのつかない爪痕を残してしまうのです。
当時、世界第4位の日本を代表する塗料メーカー日本ペイントの技術担当者とお話をさせて頂く機会がありました。日本ペイントとしての見解は、現場塗装におけるこの自己破壊リスクを正確に見抜き、安易に市場投入しませんでした。その見解に深い整合性とプロとしての筋を感じた弊社では、どれほど光触媒が流行しようとも、お施主様へ一度も販売することはありませんでした。もしあの時、目先の「売りやすさ」を優先してお勧めしていたら……今でも背筋が凍る思いがします。経営者としては優秀とは言えない、慎重派の私ですが、この時ばかりは自分の中で自分を褒めちぎりました。
誰でも「綺麗」には塗れる。だからこそ、この業界は恐ろしい
外壁塗装業界は、極端に参入障壁が低い業界です。特別な免許がなくても開業できてしまうため、塗料化学の知識が浅い塗装店や、現場を知らない営業主体の会社でも簡単に塗料を売ることができてしまいます。
正直に申し上げれば、塗装という作業そのものは、一定の器用さがあれば「塗った直後を綺麗に仕上げること」自体はそれほど難しくありません。 本当に重要で、かつ最も難しいのは、「その外壁材と建物構造に対して、本当に正しい塗料と正しい下処理方法を選び抜けるか」という判断力です。
時には塗装自体をお勧めできない、建材や構造もあるという事です。
【参考記事】
・塗装なんてどこに頼んでも同じ?
・塗れない屋根があるってご存じですか?
促進耐候性試験と暴露試験、実績の違い
塗料メーカーもビジネスですから、競合他社に先駆けて新商品を出し続けなければなりません。 しかし、カタログに書かれた「促進耐候性試験」のデータだけを鵜呑みにしてはいけません。機械の中での試験数値と、紫外線が日本一過酷な宮古島などでの実地暴露試験、そして何より「日本の四季や風雨に晒され、10年・15年経っても廃盤にならず市場で生き残り続けている実績」とでは、重みが全く異なります。
昨今の「無機ハイブリッド塗料」ブームに潜む罠
光触媒のブームが去り、今主流となっているのが「無機塗料(無機ハイブリッド塗料)」や「ラジカル制御形塗料」です。 無機成分が持つ優れた耐候性は確かに魅力的ですし、信頼できる大手メーカーの製品であれば、弊社でも自信を持ってお勧めできる選択肢の一つです。
しかし、ここでも昔と同じような構造が繰り返されています。 最近増えているのが、中身はOEM(受託製造)塗料でありながら、自社オリジナルブランドと称して「期待耐用年数30年、40年」などと過大に謳うケースです。
また、海外の最先端技術が日本上陸!!などと謳って、促進耐候性試験の数値ですら低い結果にも関わらず、30年耐久と掲載しているOEM塗料を全国展開してる訪問販売会社も存在するので困りものです。
どんなに優れた無機塗料であっても、外壁そのものの動き(地震や温度差による伸縮)や目地シーリングの寿命を考えれば、「30年塗り替え不要」などと現場を知るプロが軽々しく言えるはずがありません。弊社では、信頼できるメーカーの無機塗料をご提案する場合でも、「最大値で煽ることは絶対にせず、期待値としては20年前後でお考えください」と慎重にお伝えしています。
ネットの口コミや施工実績の「本質」を見極めてほしい
業者選びをする際、多くの方がインターネットの口コミや施工実績件数を参考にされると思います。 弊社でもGoogleの口コミなどで大変ありがたい高評価を多数いただいており、大切なお住まいをお任せくださったお客様には感謝しかありません。また、今のインターネット社会において、初めてのお客様に認知していただき、お問い合わせという形で選んでいただくためには、口コミや実績の発信を決してないがしろにできないことも事実です。
しかし、本音をお伝えします。 ネット上の口コミの多くは、「工事が終わった直後の満足度」でしかありません。
中には、まだ施工もしてないのにイベント来場者にクチコミを書いてくれたら〇〇得点とか、値引きします!とかで口コミをやたらに増やしてる会社もあり、そうなると見抜けませんよね?
営業担当の愛想が良かったか、職人のマナーが気持ち良かったか、塗り終わった家が綺麗になったか。もちろんそれも大切な条件ですが、外壁塗装の真価が問われるのは「10年後、15年後」です。 どんなに口コミ評価が高く施工実績が豊富な会社であっても、「10年後のお施主様の満足度」を証明できているわけではありません。
お施主様は塗料の化学構造や劣化メカニズムの専門家ではないからこそ、メーカーのカタログの言いなりでお勧めするようでは、専門店として不誠実だと私は考えています。
弊社は、最新建材(塗料、シーリング、屋根材)は常に実験板を作って検証しています。
宮古島に暴露試験場を借りて、各塗料がどんなレベルか自社で試験した時期もありました。
ですが困ったことに、最近の塗料は期待耐用年数が20年レベルなので、耐候性だけは、期間が長すぎて時間が足りません。ですので実績レベルで開示してくれるメーカーの塗料を扱うようにしています。
流山のショールームには、2022年のOPEN当初から暴露試験中のサンプル板があるのでご興味がある方はぜひご来店ください。営業担当は常に現場回りで外出が多く、内勤の事務パートさんも2名いますが、土日はパートさんが休みで留守がちなので、お電話で来店のご予約をおすすめしております。
10年後、15年後にも選ばれ続けるために
私たちが目指しているのは、目先の口コミの数を無闇に集めることではありません。 施工が終わったその日ではなく、10年後、15年後に「あの時、この会社に頼んで本当に良かった」と実感していただき、次の塗り替えの時期にもう一度当たり前のように声をかけていただける──そんな、住まいの生涯のパートナーとして選ばれ続けることこそが、元請けリフォーム会社としての誇りであり本質です。
「最新」「驚異の30年長持ち」といった耳障りの良い言葉に少し立ち止まっていただき、ぜひその塗料と会社が持つ「10年先を見据えた誠実さ」で選ばれ続ける会社でありたいと思います。